遺産分割のやり直し

遺産分割のやり直し

今回のお話は、私の親戚の話です。

15年ほど前に、父親が亡くなりました。相続人は母親と子二人。相続税の申告は不要でしたが、遺産分割協議書は作成しました。

遺産分割協議書の内容は、自宅不動産は母親が相続、預貯金等金融資産も母親が相続、その他の財産も母親、つまり全ての財産が母親にということでした。この遺産分割協議書は、子がインターネットなどで調べ、見よう見まねで作成したものです。母親が全てを取得できるようにという考えに基づいたものです。

時は流れ、つい最近、父親が所有していた(登記の変更もまだです)田舎の不動産(山林、田など)を買いたいという人が現れました。売却金額はさほど大きな金額ではありませんが。

父親が亡くなった時、母親もまだ若かったので、全財産は母親にということに異論はなかったのですが、現在母親は足が悪く、なかなか外に出られず、契約に出向くことが出来ないため、子が相続したことにすればいいのではと考えました。

ここで、遺産分割のやり直しが可能かどうか。

民法上は問題ありません。つまり、共同相続人はすでに成立している遺産分割協議書について、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて分割協議書を成立させることが出来るのです。最高裁判決も出ています。

では、税法上はどうなのか。税法上では、基本当初分割により取得した母親から子へ贈与があったものとされます。(相続税法基本通達19の2ー8)

ということで、今回は遺産分割協議書通りに、母親が取得したものとして所有者を変更し、母親が不動産を売却することとなりました。

母親は現時点で足が悪いだけで、判断能力には全く問題はありません。ですので、不動産売買契約は問題なくできます。だから、まだよかったのですが、判断能力がないとなると、不動産の売買は難しくなってしまいます。

ただし、令和6年4月から相続登記の申請が義務化されますので、このような事例は減っていくのだと思います。

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